株式投資を始めるとき、多くの人が最初につまずくのが「どの銘柄を選べばいいのか」という点です。有名企業をなんとなく選んだり、ネットやSNSで話題になっている銘柄に飛びついてしまうと、値動きに振り回されて疲れてしまうこともあります。ここでは、投資未経験〜初心者の方が「銘柄選びで最低限おさえておきたい考え方」と「チェックポイント」をやさしく整理します。

銘柄選びの前に決めておきたい「自分ルール」

投資の目的と期間をはっきりさせる

まず大切なのは、「何のために株式投資をするのか」を決めることです。例えば、「老後資金を少しでも増やしたい」「10〜20年スパンで資産を育てたい」という長期目線なのか、「数年先の教育資金を準備したい」のかによって、選ぶ銘柄の性格も変わってきます。

長期でコツコツ増やしたい場合は、業績が安定していて配当も期待できる企業を中心に考える人が多くなります。一方、ある程度の値動きを許容してでもリターンを狙いたい場合は、成長性の高い企業も候補に入ってきます。このように、目的と期間を決めておくと、「今この株を買って良いのか」の判断がしやすくなります。

生活費と切り離した金額の上限を決める

株式投資には元本割れのリスクがあります。そのため、当面の生活費や急な出費に備える現金はしっかり残し、「この範囲なら値下がりしても生活には影響しない」という余裕資金の中で投資金額の上限を決めておきましょう。

たとえば、「まずは合計10万円まで」「毎月1万円ずつ買い増していく」といったルールを決めておくと、感情に流されて一気に投資金額を増やしてしまうのを防ぐことができます。

銘柄を見るときの基本:業績が安定しているか

売上と利益が大きく落ち込んでいないかを見る

銘柄を選ぶときは、まずその会社がきちんと利益を出しているか、業績が安定しているかをざっくり確認しましょう。証券会社のアプリや会社四季報などでは、「売上高」「営業利益」「純利益」の推移がグラフや表で表示されています。

初心者の段階では、「細かい数字」よりも「大きな流れ」に注目するのがおすすめです。たとえば、直近数年の売上や利益が右肩上がり、もしくは大きく落ち込んでいないかどうかを見るだけでも、その企業が継続的に稼ぐ力を持っているかどうかのヒントになります。

赤字が続いていないかをチェックする

赤字の年があるからといって必ずしもダメというわけではありませんが、赤字が何年も続いている会社は要注意です。特に初心者のうちは、安定して利益を出している企業を中心に選んだ方が、値動きに振り回されにくくなります。

株価の割高・割安を見るときの基本指標

PER(株価収益率)をざっくり理解する

PERは「株価が、その会社の1年分の利益の何倍まで買われているか」を表す指標です。一般的には、同じ業種の中で極端にPERが高すぎる銘柄は割高と判断されることがあり、逆に低すぎる場合は割安と見なされることもあります。

ただし、成長期待の大きい企業はPERが高くなりやすいなど、単純に「何倍だから良い・悪い」とは言い切れません。初心者のうちは、「同じ業種の中で、特別に飛び抜けていないか」を見るくらいの感覚で十分です。

PBR(株価純資産倍率)と配当利回り

PBRは「会社が持っている純資産(資産から負債を引いたもの)に対して、株価が何倍か」を示す指標です。PBRが低いからといって必ずしも割安とは限りませんが、極端に高い・低い場合は「なぜそうなっているのか」を調べるきっかけになります。

配当利回りは、「1年間にもらえる配当金が今の株価の何%か」を示したものです。預金金利と比べると魅力的に見えることもありますが、配当は将来も同じとは限らず、業績悪化で減配・無配になるリスクもあります。高すぎる利回りだけを見て飛びつかず、「業績」「財務」とセットで考えることが大切です。

分散投資の考え方:1社ではなく、複数銘柄に分ける

初心者がやってしまいがちなのが、「良さそうな会社を見つけたから」といって、1社に資金の大半を集中させてしまうパターンです。その会社に何かトラブルが起きた場合、資産全体が大きく影響を受けてしまいます。

業種やタイプを分けてリスクをならす

株式投資では、「分散投資」という考え方が基本になります。具体的には、次のような分け方を意識するとイメージしやすくなります。

  • 業種を分ける(通信・生活必需品・サービス・製造業など)
  • 銘柄のタイプを分ける(配当重視・成長性重視・インフレに強いビジネスなど)
  • 1社あたりに投じる金額の上限を決める

例えば、合計10万円を投資するとしても、「1社に10万円」ではなく、「4社に2万5,000円ずつ」といった形で分けることで、特定の銘柄に大きく依存しないポートフォリオに近づけることができます。

情報との付き合い方と、初心者が避けたいパターン

SNSや話題性だけで選ばない

今はSNSや動画サイトで株の情報を簡単に得られますが、「話題になっているから」「誰かが儲かったと言っていたから」という理由だけで銘柄を選ぶのは危険です。短期的な値動きが大きい銘柄ほど、初心者には精神的な負担が増えやすくなります。

気になる銘柄があった場合も、「その会社は何をしているのか」「売上や利益はどう推移しているのか」「配当は出しているのか」など、最低限の情報を自分の目で確認するクセをつけておきましょう。

短期の値動きに振り回されすぎない

株価は日々上下に動きます。未経験のうちは、数%下がっただけでも不安になりがちですが、長期投資を前提にしているなら、一時的な値動きは避けて通れないものと割り切ることも大切です。

そのためにも、「目的」「投資期間」「投資金額の上限」「分散の方針」といった自分ルールを決め、それに沿って冷静に銘柄を選ぶ姿勢が重要になります。

※本記事は特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。株式投資には価格変動などによる元本割れリスクがあり、損失が生じる可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。