
円高になるとオルカンはどうなる?
「オルカン」と呼ばれるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、日本を含む世界各国の株式へ投資する投資信託です。
円高時に特に重要なのは、このファンドの基準価額が海外株式の値動きだけではなく為替相場の影響も受けることです。
運用会社の三菱UFJアセットマネジメントも、オルカンについて、世界の株価が上昇していても円高局面では基準価額が下落する場合があり、円高は基準価額の下落要因になると説明しています。
なぜ円高でオルカンが下がるのか
米国株が100ドルのままだと仮定します。
- 1ドル=160円なら1万6,000円
- 1ドル=150円なら1万5,000円
米国株そのものが全く値下がりしていなくても、円換算では1,000円下落します。
一方、株価そのものが大きく上昇すれば、円高による下落分を上回ってオルカンの基準価額が上昇することもあります。
「円高10%ならオルカンも10%下がる」ではない
オルカンには日本株も含まれ、米ドル以外にもユーロ、英ポンドなど複数通貨の資産があります。
運用会社も、米ドル円だけでなく複数の通貨の影響を受けると説明しています。
そのため「ドル円が5%円高になったからオルカンも5%下落する」と単純計算することはできません。
円高時にオルカンを売るべき?為替だけでは判断できない
円高は短期的には海外資産の円換算額を押し下げる要因ですが、将来の為替相場を正確に予測することは困難です。
円高を理由として売買を判断する場合でも、為替だけでなく、世界の株価、投資期間、リスク許容度、資産全体の配分などを合わせて考える必要があります。
また、積立投資の場合は円高になると、同じ円資金でより多くの外貨建て資産を取得できる面もあります。その後さらに円高になる可能性も、再び円安になる可能性もあるため、為替水準だけを根拠に将来の利益を保証することはできません。
円高と外貨預金|円高になると為替差損が出ることも
外貨預金では、預入時より円高になってから円へ戻すと、外貨ベースでは元本が減っていなくても円換算で損失が生じる場合があります。
たとえば1ドル=160円のときに160万円で1万ドルを購入し、その後1ドル=150円で円へ戻すと、単純計算では150万円です。
利息や為替手数料を除いても10万円の為替差損となります。
外貨預金の為替差益と確定申告・税金
円へ戻して生じた為替差益は原則「雑所得」
国税庁は、保有する外国通貨を日本円へ交換するなどして生じた為替差益は原則として「雑所得(その他)」となり、確定申告の対象になると説明しています。
一方、まだ円へ交換していない単なる含み益は、利益が確定していないためその時点では確定申告する必要はありません。
外貨のまま別銀行へ移しただけなら為替差益が確定しない場合がある
国税庁は、ドル預金を払い出し、そのドルを同日に別銀行のドル預金へそのまま預け入れた事例について、元本部分の為替差益を認識する必要はないとしています。
一方、保有している外貨を使って別の資産を購入するなどした場合は、その時点で為替差損益を認識するケースがあります。
外貨預金の利息は為替差益とは税金の仕組みが違う
国内金融機関で受け取る通常の預貯金利子は、原則として20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%)が源泉徴収され、源泉分離課税で納税が完結します。
国外で支払われ、国内で源泉徴収されない預金利息などは取扱いが異なり、申告が必要になる場合があります。
為替差益と利息を同じ税制だと思わないことが重要です。複数通貨の売買を繰り返している場合など、取得レートの判定が複雑になるケースでは税務署や税理士への確認が適切です。
個人ができる円高・円安対策
個人にとって重要なのは、円高か円安かを当てることよりも、為替がどちらへ動いても家計・資産全体が大きく傷まない状態にすることです。
1.資産を一つの通貨へ集中させすぎない
資産のほぼ全額を外貨にすると急激な円高の影響が大きくなります。反対に円だけを保有していれば、円安時には海外商品や輸入品に対する購買力が低下します。
国内外の資産を持つことは、特定通貨への集中を抑える方法の一つです。
2.海外旅行など予定された外貨支出は購入時期を分散する
半年後に海外留学・旅行などでドルが必要だと分かっている場合、為替の底値を当てようとして一度に全額交換する方法だけでなく、時期を分けることで交換レートを平準化する考え方もあります。
3.外国株の含み損益は「株価」と「為替」に分けて考える
外国株が円換算で10%下落したとしても、現地通貨では株価が上昇し、円高によって円換算額だけが下落している場合があります。
投資判断をする際には、現地通貨ベースの価格と為替の影響を分けて見ると状況を理解しやすくなります。
円高にするには何をすればよい?国が自由に決められるわけではない
「政府が円高にしたければ、明日から1ドル=120円にすればいい」というものではありません。
日本は変動相場制であり、為替相場は基本的に市場の需給で決まります。
円高につながる可能性のある政策・環境
- 日本の金利が上昇し、海外との金利差が縮小する
- 米国など海外の金利が低下する
- 政府が円買い・外貨売り介入を行う
- 市場参加者の円売りポジションが解消される
- 日本経済や円資産への需要が高まる
ただし、日本銀行の金融政策は為替相場を特定の水準へ誘導すること自体を目的としているわけではありません。日本銀行は2026年8月にも、金融政策は為替相場のコントロールを目的とするものではないと説明しています。
また、財務省も為替介入について、特定の円相場を恒久的に作るというより、急激で不安定な為替変動を抑え、安定化することを目的と説明しています。
円高の最高記録は?戦後最高値は2011年
一般にドル円相場の戦後最高値の円高水準として知られているのは、2011年10月31日です。
同日のオセアニア外国為替市場では、一時1ドル=75円32銭前後まで円高が進みました。取引市場・情報会社によって75円31銭と記録されているケースもあります。
当時は欧州債務問題や世界経済への不安を背景に円が買われ、政府・日本銀行は同日に円売り・ドル買い介入を実施しました。
なお、日本銀行の日次統計は特定時点・中心相場などを記録する統計であり、一瞬の市場最安値とは数字が異なる場合があります。
1ドル=75円だったから将来も75円へ戻るとは限らない
2011年と2026年では、日本・米国の金利、物価、貿易構造、海外投資額、企業の海外生産、市場参加者のポジションなどが大きく異なります。
過去に75円台があったことは事実ですが、それだけを根拠として「今後も75円になる」と判断することはできません。
2026年の円相場を見るときに確認したい5項目
- 日本銀行:政策金利を1.0%からさらに引き上げるか
- FRB:米政策金利3.50~3.75%をどう変更するか
- 日米金利差:縮小するのか拡大するのか
- 為替介入:財務省による新たな円買い介入があるか
- 市場ポジション:円売り・円買いの偏りが大きくなっていないか
2026年には日本銀行の利上げと大規模な為替介入が実際に行われましたが、それでも円相場は一方向には動いていません。この事実からも、単一の材料だけで為替を予想する難しさが分かります。
まとめ|円高は「良い・悪い」ではなく誰への影響かを見る
円高とは、円の外国通貨に対する価値が上昇することです。ドル円なら、1ドル=160円から150円へ動くのが円高・ドル安です。
円高になると、原油・天然ガス・食品・衣料品など輸入品を円換算したコストが低下しやすく、海外旅行や海外商品の購入にも有利になります。一方、輸出企業や海外事業の円換算利益にはマイナスとなる場合があり、為替ヘッジなしの外国株・投資信託にも下落圧力がかかります。
株式についても「円高になれば日本株が必ず下がる」わけではありません。海外収益の大きい輸出企業には逆風となる一方、外貨建て仕入れ・燃料費の比率が高い企業には円高がコスト低下要因となる場合があります。円高メリット銘柄を見る際は、業界名だけでなく、各企業の決算資料にある想定為替レート、為替感応度、為替予約などを確認しましょう。
オルカンなど世界株式に投資する商品については、円高が円換算基準価額の下落要因となります。ただし海外株そのものが上昇すれば、円高分を上回ることもあるため、ドル円だけで値動きを予測することはできません。
2026年9月7日時点では、日本銀行の追加利上げ観測や円売りポジションの巻き戻しなど円高材料がある一方、米国金利の動向や原油価格など円安につながり得る材料もあります。「今年は必ず円高になる」という確定した答えはなく、日米金融政策・金利差・市場需給・為替介入などを総合して見ることが重要です。
※本記事は2026年9月7日時点で確認できる公的機関、国際機関、企業等の公表情報をもとに一般的な経済・税制・金融商品の仕組みを解説したものです。為替相場、株価、金利等の将来の動きを予測・保証するものではなく、特定の株式、投資信託、外貨預金その他の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。為替・税制・金融政策等は変更される場合があります。税務上の個別判断については税務署または税理士等へご確認ください。



