家族信託 デメリット|始める前に知っておきたい注意点
家族信託には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。制度の良い面だけを見て契約すると、後で「思っていたものと違った」と感じることがあります。
デメリット1:契約書の設計が難しい
家族信託契約は、家族構成、財産内容、将来の介護方針、相続予定者の関係によって内容が変わります。誰を受託者にするか、どの財産を信託するか、受託者が死亡した場合に誰が引き継ぐか、信託終了後に誰へ財産を渡すかなど、決めるべき項目が多い制度です。
契約書が不十分だと、必要な場面で不動産を売却できない、銀行手続きが進まない、家族間で解釈が分かれるといった問題が起こる可能性があります。
デメリット2:受託者に大きな責任がかかる
受託者は、託された財産を自分の財産とは分けて管理し、受益者のために使う必要があります。入出金記録、領収書、修繕費、税金の支払いなどを整理する負担があります。
他のきょうだいから「本当に親のために使っているのか」と疑われないよう、定期的に報告する仕組みを契約や家族間のルールに入れておくと安心です。
デメリット3:節税効果を目的にすると誤解しやすい
家族信託は、基本的に財産管理や承継のための仕組みです。家族信託契約を結んだからといって、それだけで相続税が大きく下がる制度ではありません。
また、受益者を誰にするか、受益権を移すかによっては、贈与税や相続税の問題が生じる場合があります。税金面は必ず税理士などに確認しましょう。
デメリット4:すべての銀行が同じように対応しているわけではない
家族信託では、信託財産を分別管理するために銀行口座の扱いが重要になります。しかし、金融機関によって、信託口口座の開設可否、必要書類、審査基準、口座名義の形式が異なります。
契約書を作った後に銀行で口座を作れないと、実務上の管理が難しくなる場合があります。家族信託契約書を作成する前に、利用予定の銀行へ確認しておくことが大切です。
家族信託 費用 相場|何にいくらかかるのか
家族信託の費用は、信託財産の内容、不動産の有無、契約書の複雑さ、専門家へ依頼する範囲によって大きく変わります。専門家報酬は全国一律の公定価格ではないため、「必ずいくら」と断定することはできません。
主な費用項目は次のとおりです。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 専門家への相談・設計報酬 | 司法書士、弁護士などに契約設計や書類作成を依頼する費用。財産規模や難易度で変わります。 |
| 公正証書作成手数料 | 公証役場に支払う手数料。目的価額などに応じて定められます。 |
| 登録免許税 | 不動産を信託する場合に必要。土地・建物の評価額や税率で計算します。 |
| 登記申請の司法書士報酬 | 不動産の信託登記を司法書士に依頼する場合の報酬です。 |
| 契約後の管理費用 | 信託監督人や受益者代理人を置く場合、継続的な報酬が発生することがあります。 |
費用相場を確認するときは、総額だけでなく「契約書作成までなのか」「公正証書化のサポートを含むのか」「登記費用を含むのか」「税理士確認が別料金か」を見ましょう。安さだけで選ぶと、後で登記や銀行手続きに対応できず、追加費用が発生する場合があります。
家族信託を始める前のチェックリスト
- 本人が契約内容を理解できる状態か
- 信託の目的が明確か
- 受託者に管理能力と時間的余裕があるか
- 他の相続人にも説明しているか
- 銀行の口座開設可否を確認したか
- 不動産登記が必要か確認したか
- 税金の影響を専門家に確認したか
- 契約終了後の財産の行き先を決めているか
家族信託は「早めの話し合い」が最大の対策
家族信託は、親の判断能力がしっかりしているうちに、家族で財産管理の方針を話し合うための制度です。認知症発症後でも契約できる可能性が残る場合はありますが、判断能力に不安が出てからでは、契約の有効性や家族の合意形成が難しくなります。
特に不動産やまとまった預金がある家庭では、家族信託契約、任意後見、遺言、成年後見、相続税対策を分けて考えることが大切です。家族信託だけで全部を解決しようとせず、必要に応じて司法書士、弁護士、税理士、公証役場、金融機関に確認しながら進めましょう。
大切なのは、親の財産を「誰がもらうか」だけでなく、「親が安心して暮らすために、誰がどのように管理するか」を先に決めておくことです。家族信託は、そのための有力な選択肢のひとつです。
<参考サイト> 法務省 / e-Gov法令検索 / 日本公証人連合会 / 国税庁 / 一般社団法人信託協会 / 一般社団法人家族信託普及協会 / 日本郵便
