退職金の計算方法。会社の支給額と税金の計算は分けて考える

退職金の計算方法には、大きく分けて2つの意味があります。1つは会社が退職金そのものをいくら支給するかを決める計算、もう1つは受け取った退職金に税金がいくらかかるかを求める計算です。

会社が支給する退職金は、基本給、勤続年数、退職理由、役職、ポイント制、功労加算など、会社の規程に基づいて決まります。たとえば、勤続年数が長いほど支給額が増える制度もあれば、退職時の基本給に一定の支給率をかける制度もあります。自己都合退職では会社都合退職や定年退職より支給率が下がる場合もあります。

退職金の相場を見るときの注意点

退職金の相場は、学歴、職種、企業規模、勤続年数、退職理由によって大きく変わります。厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者について、退職給付額の平均が学歴や職種、勤続年数別に示されています。ただし、これはあくまで調査対象企業の平均であり、個人の退職金額を保証するものではありません。

相場を参考にする場合は、「自分の会社の退職金規程」と「統計上の平均」を混同しないことが大切です。平均額を見て少ない・多いと判断する前に、勤務先の制度でどのように算定されるのかを確認しましょう。

退職金控除とは?退職所得控除額表の基本

退職金にかかる税金を考えるうえで欠かせないのが、退職所得控除です。退職金は長年の勤務に対する一時的な収入という性格があるため、給与とは異なる税金の計算方法が用意されています。

国税庁が示す退職所得控除額の基本は、次のとおりです。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数
※80万円に満たない場合は80万円
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

勤続年数に1年未満の端数がある場合は、切り上げて1年として計算します。たとえば勤続10年2か月なら、税金計算上は11年として扱います。障害者となったことが直接の原因で退職した場合など、控除額が加算されるケースもあります。

退職金控除の計算例

勤続30年で退職した場合、退職所得控除額は次のように計算します。

800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円

仮に退職金が2,000万円の場合、退職金から退職所得控除1,500万円を差し引いた残りは500万円です。一般的な退職所得では、この残額に2分の1をかけた金額が課税退職所得金額になります。

(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円

この250万円をもとに所得税・復興特別所得税・住民税が計算されます。退職金の税金計算は、給与と合算して単純に税率をかけるものではないため、仕組みを知っておくだけでも見通しが立てやすくなります。

退職金の税金計算。所得税と住民税の考え方

退職金の税金は、主に所得税、復興特別所得税、住民税です。退職所得は、原則として他の所得と分けて税額を計算する分離課税の扱いになります。そのため、退職金を受け取った年の給与が多いか少ないかだけで税額を判断することはできません。

住民税についても、退職所得に対して課税されます。退職金の住民税は、通常の給与にかかる住民税のように翌年課税されるのではなく、退職金の支払時に差し引かれる形で精算されるのが一般的です。退職所得の源泉徴収票・特別徴収票には、住民税に関する情報も記載されます。

確定申告が必要になる場合もある

退職所得の受給に関する申告書を提出し、会社で適正に税額計算が行われていれば、退職金だけを理由に確定申告が必要になるとは限りません。ただし、医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除、給与以外の所得がある場合など、別の理由で確定申告をする人は、退職所得を含めて申告が必要になることがあります。

また、退職所得の受給に関する申告書を提出していなかった場合は、20.42%で源泉徴収されている可能性があるため、確定申告によって精算する余地があります。実際の判断は個別事情によって異なるため、源泉徴収票を手元に置いて、税務署や税理士に確認すると安心です。

税金を確認した後に悩みやすいのが、受け取った退職金をどう守り、どう使うかです。次のページでは退職金運用と定期預金の注意点を解説します。