在職定時改定とは?働き続けた分が年金額に反映される仕組み

在職定時改定とは、65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者が、厚生年金に加入して働き続けている場合に、その加入実績を毎年10月分から年金額へ反映する制度です。

以前は、65歳以降に厚生年金へ加入して働いた分は、退職時や70歳到達時などに年金額へ反映される仕組みでした。現在は、退職を待たずに毎年改定されるため、働き続けた効果が比較的早く年金額へ反映されます。

対象は65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給者

在職定時改定の対象となるのは、65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者です。65歳未満の方は、繰上げ受給をしている場合でも在職定時改定の対象にはなりません。

また、在職定時改定によって老齢厚生年金額が増えた場合でも、増えた後の年金額と賃金の合計が支給停止基準額を超えれば、在職老齢年金による調整が行われる可能性があります。年金額が上がることと、実際の支給額が必ず同じだけ増えることは、分けて考える必要があります。

在職老齢年金と税金・確定申告の注意点

在職老齢年金そのものは、年金の支給額を調整する制度です。一方、税金は別のルールで計算されます。働きながら年金を受け取る方は、給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方を確認する必要があります。

年金は原則として雑所得、給与は給与所得

国民年金や厚生年金などの公的年金は、税法上は原則として「公的年金等に係る雑所得」として扱われます。会社から受け取る給与は「給与所得」です。年金と給与は所得の種類が異なるため、年末調整だけで税金の精算が完了しない場合があります。

公的年金等については、一定額を超えると所得税等が源泉徴収されます。ただし、源泉徴収はあくまで概算の前払いに近いもので、医療費控除や社会保険料控除、扶養控除などを反映するために確定申告が必要または有利になることがあります。

確定申告が不要になる場合もある

公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合、所得税および復興特別所得税の確定申告が不要となる制度があります。

ただし、在職中で給与収入がある場合は、この「公的年金等以外の所得金額」が20万円を超えることがあります。ここでいう20万円は給与収入そのものではなく、給与所得控除後の所得金額で判断します。勤務先からの給与がある方は、源泉徴収票をもとに確認することが大切です。

また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。医療費控除や社会保険料控除などで還付を受けたい場合も、確定申告を行う必要があります。

2026年分以後は源泉徴収の基準にも注意

公的年金等から所得税等が源泉徴収される目安は、年齢によって異なります。国税庁資料では、令和8年分から、65歳未満は155万円、65歳以上は205万円を超える公的年金等を受け取る場合に源泉徴収の対象となる旨が示されています。

ただし、実際の税額は、年齢、年金額、給与、扶養親族、社会保険料、医療費控除などによって変わります。在職老齢年金で年金が一部停止されている場合は、実際に支給された年金額や源泉徴収票の内容を確認して判断しましょう。

在職老齢年金で迷ったときの確認ポイント

在職老齢年金は、年金額、給与、賞与、厚生年金加入の有無によって結果が変わります。大まかな判断をする際は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

  • 老齢厚生年金の月額はいくらか
  • 老齢基礎年金を含めずに考えているか
  • 給与は手取りではなく標準報酬月額ベースで見ているか
  • 直近1年間の賞与を12で割って加えているか
  • 基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超えるか
  • 繰下げを考える場合、支給停止部分が増額対象外になる点を理解しているか
  • 給与所得と年金所得を合わせた確定申告の要否を確認しているか

特に2026年4月以降は基準額が月65万円に引き上げられたため、以前は支給停止があった方でも、今後は停止額が減る、または全額支給になる可能性があります。一方で、給与や賞与が増えれば再び支給停止の対象になることもあります。

最終的な年金額は、ねんきんネット、年金事務所、勤務先の給与情報、源泉徴収票などをもとに確認するのが確実です。税金については、税務署、市区町村、税理士などに相談すると、住民税や控除も含めて整理しやすくなります。

在職老齢年金は、「働くと損」と単純に判断する制度ではありません。老齢基礎年金は原則として調整対象外であり、2026年4月から基準額も引き上げられています。働き方、年金の受け取り方、税金の負担を分けて確認することで、自分に合った老後の収入設計を考えやすくなります。

<参考サイト>日本年金機構 / 厚生労働省 / 国税庁