
増資は、企業が成長投資や財務基盤の強化などを目的として資本金を増やすことです。しかし、「増資をすると株価が下がるのはなぜ?」「既存株主の持分は薄まる?」「資本金と資本準備金はどう分ける?」「登記や仕訳はどうする?」など、企業側にも株主側にも重要な論点が数多くあります。さらに、増資には公募、第三者割当、株主割当など複数の方法があり、すべてが同じ効果を持つわけではありません。本記事では、2026年9月7日時点の会社法、税務・登記制度、東京証券取引所のルールなどを確認したうえで、増資の仕組みから株価への影響、手続き、税金まで平易に解説します。

この記事の目次
- 増資とは何か、仕組みをわかりやすく解説
- 増資の種類とそれぞれの特徴
- 企業が増資する理由とメリット・デメリット
- 増資で株価が下がるといわれる理由
- 既存株主への影響と株式の希薄化
- 増資と減資の違い
- 新株発行による増資手続きと登記の流れ
- 資本金と資本準備金の違い・仕訳
- 利益剰余金を使った資本金の増加
- 増資に関する税金・確定申告
- 「増資」を英語で表すと?
増資とは?会社の「資本金」を増やすこと
増資とは、会社の資本金の額を増やすことです。代表的なのは、株式会社が新しい株式を発行し、投資家や既存株主から払い込まれた資金の全部または一部を資本金として計上する方法です。
銀行からの借入金とは異なり、株式の発行によって受け入れた出資金には通常、借入金のような元本返済期限や約定利息の支払義務はありません。そのため、増資は企業の自己資本を厚くする資金調達手段として利用されます。
ただし、「増資=必ず会社に新しい現金が入る」とは限りません。後ほど解説するように、会社内部にすでに存在する剰余金を資本金へ振り替える方法も会社法上認められています。この場合、資本金の数字は増えますが、会社全体の純資産や現預金そのものが増えるわけではありません。
増資の種類は主に3つ|誰に新株を引き受けてもらうかで変わる
新株発行による増資は、誰に株式を取得してもらうかによって大きく分類できます。
1.公募増資
公募増資は、不特定多数の投資家を対象として新株を募集する方法です。上場企業が大規模な資金を市場から調達する際に利用されることがあります。
多くの投資家から資金を集められる一方、発行済株式数が増えるため、既存株主の1株当たり利益や持株比率に希薄化が生じる場合があります。また、上場会社では金融商品取引法に基づく手続きや取引所への適時開示なども関係します。
2.第三者割当増資
第三者割当増資とは、取引先、金融機関、スポンサー、投資ファンドなど、特定の相手に新株を割り当てる方法です。
事業上の提携関係を強化したい場合や、特定の投資家から迅速に資金を調達したい場合などに利用されます。
一方で、新しい株主が大量の株式を取得すると、既存株主の議決権割合が大きく低下する可能性があります。東京証券取引所では、上場会社が第三者割当を行い、希薄化率が25%以上になる場合や支配株主が異動する場合、原則として独立した者から必要性・相当性について意見を取得するか、株主総会などによる株主意思確認を行うことを求めています。
さらに、希薄化率が300%を超える第三者割当については、株主・投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除き、上場廃止の審査対象となるルールがあります。
3.株主割当増資
株主割当増資は、既存株主に対し、その保有株式数に応じて新株の割当てを受ける権利を与える方法です。
会社法では、株主に募集株式の割当てを受ける権利を与える場合、原則として保有株式数に応じて権利を与える仕組みが定められています。
既存株主が割当てに応じれば持株比率を維持しやすい一方、申し込みを行わなければ、その株主の持株比率は低下する可能性があります。
新株を発行しない「資本金の増加」もある
会社法第450条では、株式会社が剰余金を減少させ、その分だけ資本金を増加させることも認めています。この場合は新しい投資家から資金を集めるものではありません。
一般に「無償増資」「資本組入れ」などと説明されることもありますが、新株発行を伴う資金調達とは効果が異なるため、何を目的とした資本金増加なのかを確認することが大切です。
企業が増資する理由|業績悪化だけが理由ではない
企業が増資を行う理由は一つではありません。代表例として、次のようなものがあります。
- 工場・店舗・システムなどへの設備投資
- 新規事業への投資
- M&Aや企業買収の資金確保
- 研究開発費の確保
- 運転資金の確保
- 借入金の返済や財務体質の改善
- 資本・業務提携の強化
- 財務基盤の強化
業績や資金繰りが悪化した企業が財務改善を目的として増資するケースもあります。しかし、「増資した企業=業績が悪い」と判断することはできません。成長投資を加速するための積極的な資金調達として増資する企業もあります。
上場会社を見る場合は、増資の事実だけでなく、調達予定額、資金使途、発行価格、発行株式数、希薄化率、事業計画などを確認することが重要です。
企業側から見た増資のメリット
返済期限がある借入金とは性質が異なる
新株発行による資金調達は、借入金のように契約上の元本返済期限を迎えて返済する性質のものではありません。また、一般的な借入金のような約定利息もありません。
そのため、中長期の設備投資や成長投資の資金を自己資本として確保できることは大きな特徴です。
自己資本を厚くできる
新株発行によって純資産が増えれば、他の条件が同じであれば自己資本比率などの財務指標の改善につながることがあります。
負債による調達と株式による調達をどのように組み合わせるかは、企業の財務戦略における重要な判断となります。
事業パートナーとの関係強化にも使える
第三者割当増資では、事業会社などに株主になってもらうことで資本関係を構築できます。単純な資金調達だけでなく、業務提携などと組み合わせて実施されることもあります。
しかし、増資には既存株主にとって見逃せない影響があります。特に「株価が下がる」といわれる理由と希薄化の仕組みは、次のページで具体例を使って整理します。





